職場の教養|樋口一葉に学ぶ
樋口一葉に学ぶ
「つらいときには自分より苦労した人のことを思い浮かべるようにしている」と述べたのは、伊藤忠商事会長の岡藤正広(おかふじ・まさひろ)氏です。
岡藤氏は、その一人として、明治時代の小説家である樋口一葉の名を挙げています。
「女性が学問を学ぶことが難しい」とされていた時代に、その逆境の中で生活に困窮して借金に追われる苦境にあっても小説を書き続けた樋口一葉。
その努力が実を結んで認められたものの、二十四歳の若さでこの世を去りました。
岡藤氏は、「彼女の無念を思えば、我々の苦労などいかほどか」と述べ、一葉の残した言葉には背筋が伸びるとも語っています。
人は他人と自分を比べることで、優越感に浸ることもあれば、劣等感にさいなまれることもあります。
しかし、自他の比較を通じて、自分が置かれている環境がいかに恵まれているかを知る機会にもなります。
他者を知ることは、単に知識を得るだけでなく、客観的に自分を見つめ直し、生きる気力を湧き起こさせる貴重な作業となり得るのです。今日の心がけ◆先人の人生から学びましょう
職場の教養 2025年2月号
感想例①
樋口一葉がこんなに苦労人だったとは知りませんでした。
短い人生の中で大きな足跡を残したから、今お札にまでなっているのかなと思いました。
私たちも困難に直面したとき「自分よりも苦労した人がいる」と考えることで、前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。
特に仕事において、思うようにいかないときや壁にぶつかったとき、この考え方を活かせると思います。
「今の自分はまだ恵まれている」「もっと努力できるはずだ」と思えれば、諦めずに前進できるはずです。
これからは、ただ「しんどい!」と嘆くだけじゃなく、「この状況をどう乗り越えよう?」と考えるようにしたいと思いました。
感想例②
「自分より苦労した人を思い浮かべると、自分はまだ恵まれてると思える」っていう考え方、確かにその通りだなと思います。
でも、これがいつもプラスに働くかというと、ちょっと疑問もあります。
「この程度の苦労で弱音を吐くなんてダメだ」と思いすぎると、逆に自分を追い詰めちゃうこともあるんじゃないでしょうか。
特に今の時代は、なんでも「自己責任」って言われがちだから、無理しすぎるのも怖いですよね。
それに、樋口一葉のような才能ある人が、お金に困って苦しい生活を送り、若くして亡くなったことは、「自分の励み」にするだけじゃいけない気がします。
彼女の無念を本当に思うなら、現代においても「才能が正当に報われる社会」を作ることこそ、私たちにできることではないでしょうか。
感想例③
「自分より苦労した人を思い浮かべる」という考え方は、ドラマや映画に通じるものがあると思いました。
たとえば、ドラマや映画で主人公がどん底から這い上がる姿を見て「自分も頑張ろう」と思うことがあります。
スポーツの試合でも、選手が苦境を乗り越えて勝つ姿に感動し、自分の活力にすることがありますよね。
人間は、他人の努力や苦労を知ることで、無意識のうちにモチベーションを得る生き物なのかもしれません。
一方で、これを逆手に取ると、「より過酷な状況を美化し、苦労すること自体を価値あるものと見なす風潮」にもつながる気がします。
「苦労したから偉い」「辛い状況に耐えることが美徳」となってしまうと、本来改善できる問題まで放置されることもあるのではないかと思います。
ドラマはそれでいいかもしれませんが、現実では経済的な理由で命を縮めることのない社会を作るために、「苦労を称賛する」のではなく「苦労を減らす工夫をする」ことも大事だと思いました。