職場の教養|心をつなぐ食事
心をつなぐ食事
総務省統計局の発表によると、二〇二四年五月時点の、七十五歳以上の人口は二〇五一万人以上で、前年同月と比べておよそ七十万人増えています。
年齢を重ねると、若い時のようには体が動かなくなるものです。
食事において噛む力や飲み込む力が弱くなり、味覚も衰えていきます。
「人生一〇〇年時代」と呼ばれる現代において、健康長寿を実現するためには、規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事が大切です。
九十四歳の現役料理人である道場六三郎(みちば・ろくさぶろう)氏は、認知症の妻の介護と看取りを経験した背景から、高齢者向けのメニューを開発しています。
〈美しくおいしい料理は、食べる人に楽しく生きる力を与える〉という思いから、道場氏は食感・香り・味付けにこだわって試作を重ねています。
高齢者施設の入居者にも試食をしてもらい、その意見を取り入れているそうです。
相手を思う仕事は、その心遣いが相手に伝わり、感動を与えます。
日々の仕事でも真心を込めて、相手に幸福と生きる力を与えたいものです。今日の心がけ◆真心を形にしましょう
職場の教養 2025年2月号
感想例①
道場さんの取り組みを知って、食事って単に食べるだけの事じゃないなって、しみじみ感じました。
奥さんへの献身的な介護の経験から、同じような境遇の人たちへの思いやりの行動が生まれたっていうのは、人生の深い意味を教えてくれているように思います。
試作を重ねて、実際に高齢者の方々の声を聞いて改良を重ねているっていうところが、すごく心に響きました。
私も行き詰まった時には、こういう地道な努力の大切さを思い出したいです。
94歳になっても、誰かのために新しいことに挑戦し続ける姿勢に、年齢って関係ないんだなって勇気をもらいました。
相手のことを思って作られた料理からは温かみが伝わると信じて、子供たちの食事作りも頑張りたいと思います。
感想例②
正直なところ、介護の現場を経験した身からすると、食事の大切さは分かるけど、それ以前の課題が山積みなんですよね。
奥さんの介護と看取りを経験された道場さんなら、食事以外の様々な苦労も味わってこられたはずなのに、その部分の言及が薄いのが少し残念です。
お年寄りの味覚が衰えていくっていう現実は、もっと切実な問題として捉える必要があると思います。
美味しく食べられないっていう喪失感は、想像以上に大きいものですから。
真心を込めた仕事は素晴らしいけど、介護する側の疲労や限界についても、もっと率直に語られるべきだと感じました。
感想例③
人間にとって「食べる」という行為は、単なる生命維持以上の意味があるんだなって、あらためて考えさせられました。
赤ちゃんのときのミルクから、受験期の親の差し入れ、友達の家に泊まったときの夜食、結婚式の料理…人生の節目には、いつも誰かの思いのこもった食事が寄り添ってきたような気がします。
道場さんが妻のために作られた料理には、きっと言葉では言い表せないような深い愛情が込められていたんだろうなって、胸が熱くなりました。
歳を重ねて体が思うように動かなくなっても、美味しい食事を楽しみたいという気持ちは、人間の尊厳に関わる大切な部分なのかもしれないって思いました。
食事を通じて誰かの人生に寄り添えるって、すごく素敵な仕事だなと感じます。